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特別インタビューとしてClinic magazine7月号(2004)に掲載されました。 山之内国男氏(山之内糖尿病予防研究所クリニカルデスク) 「契約診療」というスタイルで 糖尿病治療の裾野を広げていきたい
〜複数の医療機関と契約し糖尿病専 門外来を担当、開業場所・資金を 必要としない新しい診療スタイル を確立〜 <リード > 自らの診療施設を持たず、複数の医療機関と契約して専門外来を担当する──。そんな新しい診療スタイルを実践する山之内国男氏。 昨年8月まで在籍した愛知医科大学では内分泌・代謝・糖尿病内科の助教授として、とくに糖尿病の運動療法の研究で知られる。教授就任の話もあったが、自らの腕一本で診療を行っていくことを決断、『山之内糖尿病予防研究所クリニカルデスク』を開設した。 現在7医療機関と契約、患者数は1,000 名を超え、糖尿病教室や講演活動なども精力的にこなす。開業とは異なり、スタート時の資金面での不安や経営面の煩わしさはないが、自らの技術・専門性を客観的に評価される厳しさもある。新しい診療スタイルの実際とその可能性を伺ってみた。 (編集部) <略歴> やまのうち・くにお 1974年名古屋大学医学部卒業。中部労災病院で研修後、名古屋大学大学院医学研究科に入学。81年愛知医科大学医学部助手、82年同講師。87年米国インディアナ州立大学生化学教室に留学。96年愛知医科大学医学部内科学第一講座助教授。2001年同医学部内分泌・代謝・糖尿病内科部長。03年9月「山之内糖尿病予防研究所クリニカルデスク」を設立。日本糖尿病学会評議員、日本肥満学会評議員、日本内科学会認定医ほか 今後20年の人生設計のなかで 「契約診療」のスタイルを決断 ──はじめに契約診療のシステムを立ち上げられた経緯についてご説明ください。 ▲山之内△年齢的に50歳を超えたことで、大学での活動を続けていくことの自分にとっての意味を考えました。管理職としての職能がより求められることは確実でしたが、診療する患者さんの数は増え続けている状況でした。 結局、再診の間隔が長くならざるを得ない状況で、4週に一度が6週に一度、さらに2カ月に一度になると、自分が何をしているのかさえわからず、とにかくその場を何とかやり過ごすという感じになってしまいます。もともと、診療に対する思いが強かったので、そこでどうするかで非常に悩みました。結果、必ずしも自分の望んでいる生き方とは違うと感じたのです。 ──教授就任のお話もあったと伺っています。大学の組織構造に対する疑問もあったのでしょうか。 ▲山之内△大学では診療科を再編成する形で、内分泌・代謝・糖尿病内科を立ち上げたばかりでした。また教授選の時期と重なり、それ以外の選択肢がなくなったことは事実です。大学には22年間在籍しましたが、今後の20年というスパンで考えたとき、ちょうど折り返し点で決断すべきだと思いました。 ──開業という選択もあったかと思います。 ▲山之内△開業については年齢的な問題に加えて、通常の一般外来を全て行うということには疑問を感じました。この地域でも、糖尿病の患者さんはますます増えていますが、専門医は少ない状況です。そのなかで自分の専門性を全く捨ててしまうのでは、患者さんにとっても自分にとってもマイナスとなる部分が多くなるのではないでしょうか。 加えて、開業場所や資金面の問題があります。また、大学では 500名ほどの患者さんをみていましたが、突然主治医を辞退するのも問題が多く、また、ついてきてくださる患者さんもみえることを前提にすると、なるべく近くでということになります。大学の近くは開業医も多く、そのなかで新たに開業するのでは双方にとってマイナスです。そこで、何かよい方法がないかと模索するなかで、診療施設を持たず、複数の医療機関との契約により専門外来を担当するというスタイルを思いつきました。
これまでみてきた650 名の患者が 診療活動のベースに ──現在、幾つの医療機関と契約されているのですか。 ▲山之内△7医療機関です。スケジュールを全て埋めるという意識はなく、休みも取りながら診療活動を行っています(表参照)。とくに告知等を大々的に行ったわけではありませんが、大学時代に診療を行っていた医療機関が幾つかあり、その関係をそのまま生かしていくことで、ある程度やっていけるという手応えはありました。 ──スケジュールの調整はどのようにされたのですか。 ▲山之内△たとえば、尾張旭クリニックには常勤医師が2名おり、水金で1人ずつ休みを取っているので、その休みの日にスムーズに入ることができました。各施設に関しては、診療圏が重ならないことと患者さんの選択を考慮して分散させています。そうした形でバランスを取りながら大きな枠組みを構成しました。 ──大学時代から引き続きみている患者さんは何名くらいですか。 ▲山之内△約3分の2で350 名ほどです。地理的なことを考慮して、尾張旭クリニックとメイトウホスピタルに分けています。このほかに、診療に通っていた博愛会病院でも約300名の患者さんをみていましたから、もともとのベースとして650 名から始まったことになります。新規の患者さんを合わせると、現在の患者数は1,000 名を超えています。 ──契約診療のメリットとしてはどのような点が挙げられますか。 ▲山之内△経営面に煩わされることなく、純粋に診療だけに集中できます。一人の患者さんにかけられる診察時間が増えたので、個々の生活背景まで把握したうえで自分の思い描くベストな形での診療が行えます。ノートパソコンに全ての患者さんのデータを入力、診療内容を一元化していることで診療時の情報の不足・不安も感じません。カルテについても自分のやりやすい形式を取れるなど、さまざまな面で小回りの良さを感じています。 ──治療レベルに関しては、大学時代と比較してどうですか。 ▲山之内△私の感覚としては、全く遜色ないと思っています。むしろ、もっと身近な存在として治療に関わることができるようになったと思います。30〜40歳代の患者さんでは、なかなか来院せず放置してしまうケースも多いのですが、頻回の受診で細かくフォローしていくことで、たとえば、インスリン導入も比較的容易に、適切に実施可能です。
契約医療機関にとっては 純粋な患者の増加が見込める ──各医療機関にとってはメリットがあればこその契約だと思います。 ▲山之内△それは当然です。全て専門外来として糖尿病に関しては一人でみていますから、医療機関にとっては純粋な患者数の増加が見込めることはいえると思います。 ──各施設のスタッフとの連携につてはいかがでしょうか。 ▲山之内△それぞれの施設の事情に応じてサポートの体制に違いはありますが、業務をこなしていくなかでより円滑な関係が築けると考えています。こういう点を改善してほしいという要望が認められる状況ですので、治療の流れを構築しやすいことは確かです。たとえば、血糖測定やインスリン自己注射の指導に関しても専門のスタッフを置いたり、診察室のすぐ隣で栄養指導を実施していただいているところもあります。 ──完全予約制を採用されていますが、1時間枠では何名くらいの設定をされているのですか。 ▲山之内△施設によって多少の差はありますが、話が長くなったり新規の患者さんがいらしても対応する余裕が持てるよう1時間に多くても7人以下で行っています。 ──各医療機関の経営面の意向も、ある程度受けざるを得ないかと思います。 ▲山之内△医療機関によって多少の温度差はありますが、糖尿病の患者さんは、もともと種々の管理・指導料が医療費に組み込まれていることもあり、予約制に関しては1時間に7人でも十分に経営とのバランスが取れる数字ではないかと考えています。 ──糖尿病教室なども精力的に行われていますが、それらについてはどのような位置づけですか。 ▲山之内△基本的には、日常診療で十分に説明できないことを確認してもらう場にしています。日ごろ説明したいと思っていたことを順を追って説明できますし、自分の勉強にもなります。誰でも自由に参加できますので、当日のテーマと全然関係のないことでもついでに患者さんがいろいろと質問されるなど、非常に近い距離でやれていることを実感しています。
収入は大学時代の1.3 倍 適正報酬の設定には難しさも ──報酬面での契約はどういう形を取られているのですか。 ▲山之内△正直なところ、大学時代よりも収入が下がらないように各医療機関の患者数に合わせて設定したというのが実状で、明快な計算式があるわけではありません。大学時代の総収入の1.3 倍程度になっていますが、自分の収入をどう決めるかは悩ましい問題です。 ──ある意味では、技術料を含めて医師としての価値を自身で評価しなければならない難しさがあるかと思います。 ▲山之内△適正報酬の基準が存在せず、各医療機関の経営状況についても推測しかできませんので、そのあたりをどう反映させていくのか難しい部分があります。 また、医療機関としては経営のためにやってほしいのか、専門性のアピールとしてやってほしいのか、あるいは利益を度外視してでもやりたいというところもあるかもしれません。現在はみな同じ感覚で契約していますが、そうしたことも今後は考慮すべき要素になると思います。 ──契約のあり方としては、どういう形がベストでしょうか。 ▲山之内△糖尿病は医師の業務が多様で、専門医は引く手あまたなところもありますが、私の場合は最初から患者さんがいたことでスムーズに運ぶことができました。 専門外来をゼロから始めて1年間で埋めていくのはなかなか大変なことです。これから同じようなスタイルでやりたいという人では、患者数や患者増に対する条項、また1年ごとの見直しなど、初めから細かな項目を設定したほうがやりやすいのではないかと思います。 中央から地方、患者へ 偏在する専門性の橋渡し役を担う ──今後のビジョンについては、何かお持ちでしょうか。 ▲山之内△看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士といった糖尿病療養指導士を中心とした、多職種が一体となった療養指導ができる場を模索しているところです。糖尿病をさまざまな角度から系統的に学べる場として、また、彼らが活躍していける環境づくりの一助にもなるのではないかと考えています。 ──多職種とのコラボレーションということでは、医師を中心とした契約医療チームの派遣という可能性もあるかと思います。 ▲山之内△これは少し難しいかもしれません。いろいろな医療機関に出向くことでスタッフも違えば、医療サービスに対する考え方も違ってきます。やれるとしたら、あくまでも多職種のチームによる療養指導に関する糖尿病教室などの講演活動が現実的ではないかと考えています。そのためのネットワーク作りを少しずつ進めていきたいと思っています。 ──研究活動については行っていく余地はありますか。 ▲山之内△患者中心の診療をベースに、糖尿病に特徴的な問題点や治療の発展性のようなものを考えていける可能性は十分にあると思います。 大学はある意味では何でもできる場所ですが、患者さんや実地医家が身近に必要性を感じる部分はまた少し違ったものだと思います。 ──具体的なプランは何かありますか。 ▲山之内△たとえば、私が診療している患者さんの治療に対する意識レベルが大学と施設でどう違うか。地域医療と大学病院のような高度医療施設での患者さんの受け止め方の違いなどを明らかにしたいと思います。また、治療効果の比較に加え、患者さんが感覚的に感じることも患者さんに提供できる種々のサービスを見直すうえで大切な指標になると思います。 ──現状で残された課題はありますか。 ▲山之内△きちんとした評価のなかで、どうやって一つの診療スタイルとして確立してくかは当然考えなければならないことです。契約に至る理由や、どこまでどういう期待をしているのかなど、医療機関のモチベーションの部分を体系的に整理する必要性を感じています。 ──新しい診療スタイルとしての可能性をまとめてください。 ▲山之内△私自身、契約診療というスタイルで糖尿病治療の裾野を広げていければと考えています。専門医のパワーを最大限に発揮できることで、その可能性は十分にあると思います。それが直接的な報酬につながるかは別の問題としても、患者さんを本当の専門性を持った施設だけに集めてみていくことが可能になります。 中央から地方へ、さらには患者さんへと、ある意味では偏在する専門性の橋渡しができるような役割をこれから果たしていきたいと考えています。 ──ありがとうごさいました。 <写真1> 5月21日に尾張旭クリニックで行われた糖尿病教室のようす。テーマは『足壊疽切断:あなたの足は大丈夫?』。クリニックの待合室を開放したオープンな雰囲気のなか、患者が熱心にメモを取る姿も。 <写真2> 医療機関への移動には愛車を使用。主に持ち運びするのは、患者データを管理するノートパソコン、白衣、聴診器等でフットワークは軽い。 <写真3> アジア各国から招いた薬剤師を対象にした勉強会での講義のもよう。診療活動と並行してさまざまな講演・講義活動を続けている。 <写真4> 学会での演題発表のようす。運動によるインスリン感受性改善のエビデンスを確立するなど、運動療法の研究で知られる。 <写真5> 30年来続けているテニスは、週に1度のペースで楽しんでいる。ほかにエビやメダカの水槽での繁殖に情熱を注ぐなど多趣味な一面も。 |
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国男 |
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